本書は、「原子力発電所過酷事故防止検討会」での議論の成果として平成25年4月22日に発行した報告書を元に、改めて原子力政策への提言として発刊するものです。検討会では、福島の事故を反省し、原子力の過酷事故を二度と起こさないためになにをすべきかを議論し提言として報告書にまとめました。
報告書の作成から早三年が経過しようしています。原子力関係者の間には、事故の反省やここに述べている提言を忘れ、敬遠しようとする風潮さえ感じられます。原子力発電所の再稼働が緒に着いた今、原子力関係者に、改めて原子力再生のためには福島第一発電所事故を原点として、それぞれなすべきことを再度熟慮して行動して頂きたく、本書の発刊がそのきっかけとなることを願うものです。また、専門家に限らず多くの方にはご一読されて、原子力の安全確保に関する取り組みをご理解いただき、原子力に目を向ける参考としていただければ幸いです。(発刊にあたってより)
目次
- 発刊にあたって
- まえがき
- 要旨
- 1 はじめに
- 2 我が国の過酷事故対策はどのように行われてきたか
- 2・1 TMI事故、チェルノブィリ事故を踏まえた原子力安全委員会における
- 検討及び決定
- 2・2 原子力安全委員会決定に従った通商産業省及び事業者の対応
- 2・3 欠落していた課題はなにか
- 3 東京電力福島第一原子力発電所の事故の進展と課題
- 3・1 地震動への対応
- 3・2 津波への対応とその後への影響
- 3・3 設計基準を超える事態への対応
- 3・4 全電源喪失とその影響
- 3・5 水素爆発の発生とその影響
- 3・6 何故過酷事故は防げなかったか
- 4 原子力安全の基本的考え方について
- 4・1 原子力安全の目的と基本原則
- 4・2 深層防護の考え方
- 4・3 設計基準事象と設計基準およびそれを越える事態への対応の基本的考え方
- 4・4 運転プラントへの対応/バックフィットへの取り組み
- 5 原子力安全を確実にするには
- 5・1 導入技術からの転換と安全の本質への取組み
- 5・2 「安全神話」からの脱却とリスクコミュニケーションの基盤構築
- 5・3 科学者・技術者としての役割と責任
- 6 過酷事故を防ぐ対応
- 6・1 リスク情報の活用
- 6・2 過酷事故への対応
- 6・3 リーダーシップと役割分担、責任の明確化と連携
- 7 過酷事故防止上考慮すべき具体的事象
- 7・1 想定すべき事象に対するリスク評価
- 7・2 過酷事故を誘引する内的事象
- 7・3 過酷事故を誘引する外的事象
- 8 対策の具体例
- 8・1 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を反映したアクシデントマネジメント
- 8・2 教訓の他プラントへの反映
- 8・3 安全余裕度の考察とフィルターベント策
- 8・4 諸外国の事例
- 8・5 原子力安全・保安院の対策の津波以外への有用性と今後の課題
- 9 提言
- 10 おわりに
- 参考文献
- 用語説明等
- 参考資料
- 1 東京電力福島第一原子力発電所事故に関する主な文献・報告書
- 2 福島第一原子力発電所事故関係文献情報総合サイト
あとがき
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