米国の建国以来の政府と科学技術の関係とその変化を概観し、その後、第2次世界大戦時の戦時研究開発体制の成果を踏まえて構築された米国の科学技術政策と第2次世界大戦後の欧州の経済社会の復興の過程で設立された欧州共同体の科学技術政策の歴史を時系列的に追う形で記載することとした。
また、歴史的な発展の過程で、米国において科学技術政策を巡って種々の議論があった課題について、主として米国の議論の経緯を振り返ることとし、同時平行的に欧州共同体ではどのような議論と政策が展開されてきたのかを、課題別に再度、整理してみることとした。
欧州には科学技術の大国として、英、独、仏、伊等々、近代の自然科学及び技術の発展を牽引してきた科学と技術の先進国があり、欧州の科学技術政策については、これらの諸国について個々に記載するのが通例である。
筆者が在勤の機会を得た欧州共同体の側からの視点で欧州における科学技術政策の歴史的展開を見てみたらどうなるのか。
英、独、仏、伊等の欧州の主要国と米及び日本を対比する立場とは異なる描像となるが、欧州を総体としてとらえるという観点からそれなりの意義はあるものと思う(「はじめに」より) 。
目次
- はじめに
- 第1章 米国及び欧州における科学技術政策の歴史的展開
- 1.科学技術政策の始まり
- 2.米国の科学技術政策史概略
- (1)建国当初から19世紀まで
- (2)20世紀初頭から第1次世界大戦まで
- (3)第1次世界大戦から第2次世界大戦まで
- (4)第2次世界大戦前後
- (5)Sputnik後
- (6)1960〜1970年代
- (7)転機を迎えた1980年代〜Reagan政権の誕生
- (8)1990年代以降
- 3.欧州(EU)の科学技術政策史概略
- (1)欧州共同体の設立と欧州共同の研究開発活動
- (2)欧州共同体としての科学技術に係る活動の始まり
- (3)研究開発フレームワーク計画の創設(第1次FP)〜Risenhuber Criteria
- (4)科学技術政策の協定上の位置付けの明確化(第2次FP)
- (5)欧州市場統合の拡大と科学技術政策の発展(第3次FP)
- (6)経済成長、競争力、雇用の手段としての科学技術政策の拡充(第4次〜第5次FP)
- (7)汎欧州の研究体制づくりへ(第6次〜第7次FP)
- (8)共同体の政策の担い手としての科学技術政策へ(第8次FP:Horizon2020)
- (9)今後の展望
- 第2章 科学技術政策上の課題を巡って
- 1.科学と技術
- 2.科学技術と社会
- (1)科学技術と社会の関係に係る議論
- (2)科学技術と社会の関係の変化
- 3.科学技術と政治
- 4.科学技術政策の形成過程
- 5.技術評価
- 6.産学連携
- (1)米国における産学連携の経緯
- (2)米国の産学連携の状況(1980年頃)
- (3)産学の相互作用
- (4)結論
- 7.科学技術と国際関係
- (1)技術と国際関係
- (2)科学と国際関係
- (3)科学者と政治家
- (4)科学技術政策における国際関係
- 8.科学技術政策から科学技術・イノベーション政策へ
- (1)ヤング・レポート
- (2)パルミサーノ・レポート
- (3)重要政策としてのイノベーション政策
- (4)科学技術政策から科学技術・イノベーション政策へ
- 9.研究開発のモデル
- 終わりに
- 資料
- 日米欧科学技術政策の歴史的発展(時系列対比表)
- EUフレームワーク計画の歴史的展開(第1次〜第8次)
- フレームワーク計画予算項目別構成(第1次〜第8次)
- Bush報告書(復刻本)「Science:The endless frontier」の概要(筆者訳、抜粋)
- Young 報告書「Global Competition- The New Reality」 の概要
- 2014年度科学技術予算の優先度(OMB・OSTP)
- 米国2014年度科学技術関係予算(大統領提案)概要
- 欧州委員会報告書「Society: the endless frontier」概要
- 参考文献
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