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 人類が放射線ないし放射能との関わりを持つのは、その発生以来であり、特に100余年前、キュリー夫妻のポロニウム・ラジウム発見、レントゲン博士のX線発見等を機に放射線の科学的解明が急速に進められ、その効用と同時に障害についても認識を深めてきました。
 医学的には人体の透視による臓器障害の発見など、放射能の持つ細胞組織破壊力のプラス面を臨床応用した腫瘍の治療に好成績を上げてきました。しかし第2次世界大戦において壊滅的な爆発エネルギーを持つ核物質が兵器として利用され、広島・長崎の受けた被害は単に広域破壊にとどまらず、人体の修復不能の損傷は、量的、質的かつ時間的に極めて莫大で悪性であり、また長期に及ぶことで、放射能ひいては原子力に対して人類の持つ恐怖心、拒絶心を極めて深刻なものとしました。
 第2次世界大戦後、やがては枯渇する化石燃料の代替として、また近年における環境問題の地球的クローズアップの現状も加わって、強力かつ高効率の原子力利用が急速に進められて来ましたが、この間、米国や旧ソ連の核実験場での事故や島嶼核実験場近海での漁船の被曝事故、放射能による農産物、海産物の汚染、被害規模で最大とされるチェルノブイリ発電所事故、その他規模こそ小さいものの、発電所や核物質貯蔵施設での重大被曝事故等が世界的に数多く発生しました。
 このような時代の中で、国際的に核物質、放射線、放射能に関するあらゆるデータを偏りなく、客観的に正確に把握・管理し、被曝・爆発事故の防止、無秩序な拡散、武器としての使用を防ぐことが、強く求められています。
 
 国際連合はこのような情勢推移の中、比較的早い時期ともいえる1955年に「原子放射能の影響に関する科学委員会」(UNSCEAR)を発足させました。
 科学委員会は毎年1回委員会を開催し、世界各国の斯界最高権威が一堂に会して、全体会合や各分野別の作業グループに分かれての会合を重ねています。そこでは、電離放射線源からの被曝がヒトに及ぼす影響について、資料を受理・収集・整理し、有効な形にまとめて国連総会に報告させ、その上で報告書を数年おきに刊行しています。
 本委員会での検討課題はさまざまな被曝線源、他の要因との複合影響、急性・晩発・継世代的影響、環境への影響と年々拡大しており、報告書もそれに伴って変化しています。
 一例を挙げれば、チェルノブイリ事故後の1988年版では、タイトルに「リスク」という文字が加えられ、1986年のチェルノブイリ事故による世界的レベルでの住民の被曝線量評価、あるいは、この事故での犠牲者を含めた高線量放射線による急性効果の見直し、広島・長崎の原爆放射線量の改訂、疫学調査の進展に基づく放射線発癌のリスク推定などが記録されています。
 また近年では、ラドンの影響についても国際的に研究が進み、また紫外線等の原子放射線との複合影響についても目が向けられています。こういった様々な問題に対しての本質解明のためにも、分子生物学的研究も逐次取り上げられることでしょう。
 また、日本の優れた研究成果も多数引用されており、特に放射線影響研究所による原爆被曝者の疫学調査は高く評価されています。
 本報告書は放射線とその影響に関する国際的な学術的資料の集大成であり、テキストともいえるものです。
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